抄録
リンパ節郭清の実態を解明する為に1986年より以下の3項目について検討してきた.対象は原発性肺癌596連続手術例中の縦隔郭清を行った477例である. (1) N2152例を縦隔郭清標本の術中肉眼判定により, 1 : 偽陰性29例, 2 : 正診52例, 3 : 郭清するまでもなく明白なN271例の3群に分類した.N1, 0と判明した325例68%における縦隔郭清の意義は病期の同定に止まった.N2152例中の81症例 (1+2,477例の17%) は郭清が予後向上に関わらなかった325例の代償である. (2) 肺内, 肺門, 分岐部の各リンパ節を跳ばした上縦隔へのスキップ転移は28例で径8cmの肺胞上皮癌例を除き下葉発生はなかった. (3) 上葉切除N2例の19%に分岐部リンパ節転移を認めたが当該症例の他因子は進行していた.結語;分岐部と葉間のリンパ節に転移のない下葉発生例では縦隔郭清の価値は極めて低い.上葉発生例では分岐部以外の手術所見から#7郭清の必要症例を術中に選択する事が出来る.リンパ節転移の予測困難例, 肉眼判定困難例は腺癌が, 圧倒的に多い.