抄録
バイオインフォマティックス・ツールを用いて酵母におけるDMSOの影響を調べた。酵母DNAマイクロアレイによる全遺伝子発現プロファイルと各ストレスや培養条件の違いによる遺伝子発現データをクラスター解析により比較した。酵母DNAマイクロアレイを用いてDMSOにより発現した遺伝子5,535個のうち、発現が上昇した遺伝子は、147個、発現が減少した遺伝子は、246個であった。DMSOの遺伝子発現パターンを各種ストレスと比較したところ、DMSOはDTTとdiamideの遺伝子発現と同じクラスターに分類された。また、DMSO処理により細胞壁の生合成に関わる遺伝子発現が誘導された。これらの結果から、DMSOはDTTやdiamideと同様に、ERにおけるタンパク質のフォールディングとプロセッシングを阻害し、不適切なジスルフィド結合の形成の結果として細胞壁にダメージを与えることが示唆された。また、DMSOはエタノールやガラクトースを炭素源とした場合と培養の定常期における遺伝子発現を含む同じクラスターに分類されたことから、DMSO処理により、グルコースの欠乏あるいは枯渇を促されることが考えられた。DMSO処理によりミトコンドリアを介する呼吸系が抑制されていたことから、DMSOを炭素源として利用する新たなエネルギー合成系や代謝経路の存在が示唆された。