真菌と真菌症
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クリプトコックス症に関する問題点
伊藤 章
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1982 年 23 巻 3 号 p. 215-221

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抄録

全国大学病院内科, 外科, 小児科, 泌尿器科各教室および全国主要国・公・私立病院臨床科より集めた1971年1月より1981年8月迄のアンケート集計によるクリプトコックス症 (回収率48.8%) および医学中央雑誌より集めた1971年~1980年発表のクリプトコックス症の両者から重複例を除外した453例の深在性クリプトコックス症を対象とし, 診断, 治療, 予後等につき集計し, 問題点を検討した.
クリプトコックス症は年間30~60例の症例がみられ, 男女比は1.3対1で20~69歳にかけて多い. 中枢神経系クリプトコックス症252例, 肺クリプトコックス症132例, 全身性クリプトコックス症82例で, 生存例は各々177例 (39.1%), 55例 (49.1%) 2例 (2.4%) である. これらの症例の集計の結果から次の点が問題としてあげられよう.
1. 近年クリプトコックス症は,報告されることは以前程多くはないが実数は増えつつあると思われる.
2. 本症の早期診断のための血清学的診断の普及が望まれる.
3. 本症は opportunistic infection の1つとしても注目されており, 白血病, 悪性リンパ腫, 膠原病などの基礎疾患を有する例に多く, 免疫不全との関係は, 今後課題となろう.
4. アムホテリシンBと5-フルオロサイトシンに優る治療薬がない現在, より副作用の少い, より優れた抗真菌剤の出現が望まれる.

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© 日本医真菌学会
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