薬物動態
Print ISSN : 0916-1139
14C-塩酸トラゾドンのラットにおける生体内動態
粟田 則男藤原 茂川合 良成平野 豊宇田 文昭古廐 泰子野地 めぐみ篠沢 直子
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1988 年 3 巻 2 号 p. 155-173

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抄録

塩酸トラゾドンの生体内動態を明らかにするために,14C-ラベル体を用い,ラットに4mg/kg経口投与した時の吸収,分布,排泄および反復投与による蓄積性について検討した.
1.血液中濃度は雌雄とも投与後15分に最高濃度に達した後速やかに減少し,投与後4~8時間に一時的に上昇した後,緩やかに減少した.
2.組織内濃度は投与後15分では胃,肝臓,小腸,腎臓などに比較的高い濃度が認められたが,いずれの組織内濃度も血漿中濃度の低下と共に速やかに消失した.これらは全身オートラジオグラフィーの結果と良く一致していた.
3.尿糞中へは投与後48時間までに大部分が排泄され,投与後96時間までに尿中へ38.6%,糞中へ60.1%が排泄された.
4.経口投与後8時間までに排泄された胆汁を十二指腸内に投与した場合,投与後48時間までに胆汁中へ66.2%,尿中へ6.7%,糞中へ12.4%が排泄され,腸肝循環することが示された.
5.乳汁中濃度は血液中濃度よりやや遅れて最高濃度に達し,血液中よりやや高い濃度で推移したが,その後の消失は速やかであった.
6.血漿蛋白結合率は添加濃度(0.05~1.25μg/ml)にかかわらず約90%であった.14C-塩酸トラゾドン経口投与時の血漿蛋白結合率は投与後15分,1,6および24時間で33.1~41.5%であり,蛋白結合率の低い代謝物の存在が示唆された.
7.反復投与時の最高血液中濃度,AUCおよび消失相の半減期は投与回数に比例して増加する傾向がみられたが,毎回投与後24時間の血液中濃度は14回投与でほぼプラトーに達した.また,組織内濃度も投与回数に比例して上昇する傾向がみられたが,血漿中濃度に対する各組織内濃度の比は14回投与でほぼプラトーに達した.21回投与後の各組織内濃度は比較的速やかに消失し,全身オートラジオグラフィーの結果とも良く一致した.反復投与期間中の尿糞中排泄比はほぼ一定であった.したがって,14C-塩酸トラゾドンの長期投与による放射能の顕著な体内への蓄積性や残留性は認められないと考えられる.

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