雪氷
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土の最大凍上力に関する実験的研究
高志 勤生頼 孝博山本 英夫岡本 純
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1981 年 43 巻 4 号 p. 207-216

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抄録

凍上性が大きく異なる4種類の試料土を用いて凍上力実験を行なった.実験の装置及び方法は前の論文(高志・他,1979a)と同じである.
Radd and Oertle(1973)や著者等(高志・他,1979a)は,凍上力σuが冷却面温度θcだけの関数であり両者に直線関係があることを示した.しかしながら,この関係がθcの低下につれてどこまで成立するかという興味ある課題が残っていた.本実験の結果から,σuとθcは,θcが比較的高い範囲では直線関係にあるが,θcの低下に伴なってσuは直線から外れて最終的には一定値に収束することが明らかとなった.これはσuの最大値であって最大凍上力σu maxと呼ぶべきものである.σu maxの値は土の種類によって決まる固有値として与えられ,爼橋粘土では300kgf/cm2以上,根岸シルトは130kgf/cm2,七尾シルトは30kgf/cm2,豊浦砂では4kgf/cm2であった.σu maxはθcに依存せず凍土中の不凍水から成る通路が閉塞する温度θcritに支配され,σu maxとθcritとの間には拡張したClausius-Clapeyronの熱力学式が成立する.このことは,θcがθcritよりも低い場合には凍土中ではアイスレンズがθcritの部分で成長し,それ以下の温度の部分ではアイスレンズが発生しないという観察結果からも裏付けられた.更に,アイスレンズの発生領域が凍土中の温度と有効応力及びθcritとから明確に定めることができる.

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