抄録
北太平洋西部における台風の発生および日本への台風の襲来について、地域分布や年変化、経年変化などの気候学的特徴を明らかにした。台風の発生については1953-1982年の30年間を解析の対象とした。日本への台風の襲来は、さらに長い期間の資料を収集して、1913-1982年の70年間について解析した。台風が多く発生したときと少ないときの両者について、発生場所や500mb高度場、雲量、海面水温を比較した。また台風が日本へ多く襲来した年と少ない年における台風の襲来数の分布の違いを調べた。日本各地の台風襲来数の年変化型の地域差を主成分分析で明らかにし、得られた固有ベクトルに対応する振幅係数を使って日本の地域区分を行った。
次に、東部赤道太平洋における海面水温の異常現象であるエル・ニーニョと台風の発生数との関係を見いだすとともに、北太平洋の海面水温と1953-1982年の30年間における台風の発生数および日本への台風の襲来数との相関関係を解析した。大きな相関係数が得られた海面水温、すなわち台風が発生する前年と2年前の北太平洋の海面水温を予測因子として重回帰分析を行ったところ、北太平洋の海面水温が、台風の発生数や日本への台風の襲来数を長期予報するための資料として役立つことがわかった。