紙パ技協誌
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総説・資料
コーティングカラー構成要素の歩留まりに関する新考察
―水分歩留から成分歩留への新しいアプローチ―
ケン マッケンジーアン ルタネンユッカ レートボーリヤーナ アーティカリテウボ ピーロラ
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2008 年 62 巻 5 号 p. 556-563

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抄録

近年継続的に上昇するコーター速度とコーティングカラーの構成要素数の上昇は,良好な操業性と品質を達成する上でカラーの適切なレオロジー性と水分歩留がいかに重要であるかを強調することとなった。
紙又は板紙のコーティング過程においては,プレコート層から原紙へあるいはトップコート層からプレコート層への水系相の浸透により定着が行われる。この水系相はバインダー薬品だけでなく,他の構成要素にとってもいわば乗り物のような役割を果たしている。仮に水分や構成要素の浸透程度がコントロールされていなければ,コーティングカラーの不動化によっていわゆるマイグレーションが停止される前に,カラーから原紙へ過剰な移行が起こりうる。この結果操業性が悪化あるいは不安定になり,コート層の不均一性などにより,品質に重大な影響を及ぼしかねない。
レオロジー改良剤や増粘剤はコーティングカラー中での効果を,「水分歩留(Water retention)」または「保水性」という用語で評価される傾向にある。しかしコーティングにおけるこの効果の変化を表すにはこの用語では十分ではない。本稿では我々は「構成要素歩留(material retention)」という新しい概念を紹介し,コーティングカラー中の水分を含む全ての可動要素のコントロール方法について考察を行った。このコントロールによってコーティングカラーの構成要素をZ軸方向に対し均一に配置することが可能となり,その結果インクセット性や印刷光沢の向上,モットリングの抑制や表面強度向上により印刷適正が改善され,また光学特性として,不透明度,白度および耐光性の向上も達成が可能となる。

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© 2008 紙パルプ技術協会
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