1991 年 16 巻 1 号 p. 57-62
標記構造を有する5種のカーバメイト系農薬の photo-Fries 転位についてAM1分子軌道法計算による反応解析を行なった. 最低励起一重項状態における各結合の強度を示す Mulliken population の値から, エステル部でのβ解離がα解離に比べて進行しやすいことが示唆された. また, 生成するフェノキシラジカル誘導体の各原子上でのスピン密度の計算, ならびに各素反応過程におけるエンタルピー変化の結果から, ラジカル再結合の位置選択性が推定され, オルト置換体がパラ置換体よりも生成しやすく, また, ベンゼン環上の置換基効果のあることなど, 実験結果をうまく説明することができた.