Journal of Pesticide Science
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シクロプロトリンのラットにおける代謝
瀬口 宏一郎浅香 四郎加藤 義郎山口 勇
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1991 年 16 巻 4 号 p. 591-598

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抄録

シクロプロトリンは水稲, 野菜, 果樹等の害虫を防除するために開発された殺虫剤である. Cyclopropane 環の3位を14Cで標識したシクロプロトリンを用いて, ラットにおける吸収, 分布, 排泄および代謝について検討した. ラットに経口投与した14C-シクロプロトリンは速やかに糞尿中に排泄された. 168時間までの累積排泄率は, 糞中に63%, 尿中に36%であった. 単回経口投与後の血液および組織中の放射能は投与後3時間で最高になった. 7日間反復経口投与 (1回/日) した各組織中の放射能は, 脂肪と皮膚を除いて3日以後1回経口投与時の約3.6倍の濃度となり定常状態に達し, 投与終了後速やかに減衰した. 脂肪と皮膚中の放射能は他組織に比較して高く, 減衰速度も遅かった. 最終投与7日後, 各組織に残存する放射能はわずかであるか, もしくは検出されなかった. 経口投与された14C-シクロプロトリンは (RS)-2,2-dichloro-1-(4-ethoxyphenyl) cyclopropanecarboxylic acid に加水分解された後, 4位エトキシ基がさらに酸化されて尿中に排泄された. 一方, 未変化体 (投与量の48%) は糞中に排泄された. 代謝物として, (RS)-α-cyano-3-phenoxybenzyl (RS)-2,2-dichloro-1-(4-hydroxyphenyl) cyclopropanecarboxylate, (RS)-2,2-dichloro-1-(4-ethoxyphenyl) cyclopropanecarboxylic acid, (RS)-2,2-dichloro-1-(4-hydroxyphenyl) cyclopropanecarboxylic acid, (RS)-2,2-dichloro-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl] cyclopropanecarboxylic acid およびそれらの抱合体が同定された. 主代謝物は (RS)-2,2-dichloro-1-(4-hydroxyphenyl)cyclopropanecarboxylic acid であり, 投与量の39% (尿中に31%, 糞中に8%) を占めた.

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