抄録
除草剤ブタクロールを一般使用量, 10倍量および50倍量で湛水土壌中に施用し, 尿素および硫安施用時のチッ素の形態変化におよぼす影響を対照区と比較した結果, pH 6.8, 30℃ではブタクロールはいずれの濃度においても尿素のアンモニア化成と硫安の硝酸化成をわずかに促進することが認められたが, pH 4.9の場合には10倍量および50倍量においては尿素のアンモニア化成を遅延させ, 50倍量では硫安の硝酸化成を阻害することがわかった. 15℃においては対照区とほとんど差異はなかった. ブタクロールの土壌微生物による主要代謝物の一つである 2-chloro-2′,6′-diethylacetanilide は1,000ppmの濃度においてはアンモニア態チッ素の利用を遅延させ, 亜硝酸態チッ素の酸化を阻害した. ブタクロールと三種類のジフェニルエーテル系除草剤NIP (nitrofen), CNP (chloronitrofen), およびクロメトキシニル (X-52) とのそれぞれの混合剤では一般使用量および10倍量ではアンモニア化成および硝酸化成に著しい影響を与えない. 土壌の塩基置換容量はブタクロールを使用後7週間後においても大した変化はなく, 一般使用量では初期に土壌の呼吸の促進を認めたが10倍量および50倍量では一時的の阻害現象が認められた. ブタクロールの添加はいずれの濃度においても1週間後には対照区よりも多い土壌微生物の存在が認められ, 4週間後には高濃度においてより高い数値を示した.