2015 年 71 巻 2 号 p. 208-220
既設鋼橋の補修溶接部の品質向上を目的に,現場で使用できる簡易熱源(シート状セラミックヒーター)を用いた熱処理による残留応力緩和効果を検証した.すみ肉まわし溶接継手を対象に一連の実験を実施し,選定した熱源により,熱処理に要求される温度履歴が高精度に管理できることを確認した.溶接部には母材の降伏応力にほぼ等しい引張残留応力が生じていたが,熱処理により残留応力がほぼゼロに緩和されることが分かった.また,高温クリープ特性を考慮した熱弾塑性解析により熱処理過程をシミュレーションし,残留応力の緩和メカニズムを明らかにした.一方,疲労試験を行い,溶接ままの継手に比べ熱処理により残留応力を緩和したすみ肉まわし溶接継手は低応力範囲(100MPa)において疲労寿命が2倍程度になることを示した.