紙パ技協誌
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製紙技術特集II
オンラインペーパーアナライザーを用いた抄紙プロセス管理
―繊維特性からの紙強度予測とリファイナー管理―
ユッカ ノケライネン佐藤 武志
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2015 年 69 巻 10 号 p. 1063-1069

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抄録

品質の改善とプロセスの最適化を検討する場合,プロセス管理のために信頼性の高い計測データが必要となる。製紙プロセス全体を検討するとき,そのパラメータはパルプ工程ではpH,カッパー価,導電率と白色度,原料調成工程ではフリーネス,繊維形態,繊維と灰分の原料濃度,ウェットエンド工程では歩留り,電荷および化学的特性である。
本稿は抄紙工程における総合的な品質管理と最適化の可能性を提示する。例えば,ウェットエンド工程での白水制御によるプロセス安定化は,製品欠陥の減少,紙中灰分増加の実現によるコスト削減等の利益をもたらす。また,フィブリルのオンライン測定に基づいた紙の強度特性の予測について,フィンランドのオウル大学との共同研究結果を紹介する。評価分析はValmet MAPオンライン・ファイバー・アナライザーを用いて行われた。MAPの主な測定項目はフリーネス,濃度,繊維長,繊維幅,微細繊維,シャイブ,フィブリル,キンク,繊維粗度,ベッセル,フロック等である。MAPによる引張り強度予測のモデル構築のため,叩解のパルプ濃度とエネルギー原単位を変化させながら,ラボでの手透きシート引張り強度測定結果と,MAPによる全てのオンライン繊維特性測定変数の比較が約1箇月間行われた。
これらのデータにより,Valmet Modelerソフトプログラムを用いて引張り強度予測モデルが完成し,この中でMAPのフィブリル化率測定と引張り強度との強い相関が実証された。その後,モデルの検証のため3つの独立したバリデーション試験が9箇月間に渡って行われ,高解像度画像解析によるオンラインの繊維フィブリル化測定により紙の強度特性のリアルタイムでの予測が可能であることがわかった。

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© 2015 紙パルプ技術協会
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