2015 年 71 巻 2 号 p. I_773-I_784
鋼構造部材のあて板溶接補修を想定し,一定引張荷重が作用する鋼部材に対し,あて板溶接を施した場合に生じる残留応力の特徴を明らかにするための実験および数値シミュレーションを実施した.作用荷重に加え,溶接後の収縮変形を拘束する効果が残留応力に影響を及ぼし,その影響の度合いは溶接部よりも母材部の方が大きくなることが分かった.一方,荷重作用下で溶接した部材の残留応力を緩和するため,セラミックヒーターを用いた応力除去焼鈍とそのシミュレーションを実施した.焼鈍中の加熱過程において溶接残留応力および作用荷重による応力は緩和されるが,その後の冷却過程で生じる収縮変形を拘束する効果で応力が再生した.しかし,溶接のままの応力状態に比べれば焼鈍後は溶接部の引張応力が30%程度に低減された.