大腸がん検診目的の大腸CTの導入を目指して、欧米では2000年台前半から精度検証が開始された。米国ではNational CT Colonography Trial(ACRIN6664)が実施され、その結果として内視鏡検査に対する大腸CTの非劣性が証明された。欧州でも、ドイツ、イタリア、さらにフランスから良好な結果が報告された。これらの成功を受けて、米国では大腸CTが精度の高い大腸がん検査法として、米国癌協会、大腸がんにおける米国多学会共同作業部会、および米国放射線医学会が策定した大腸がん検診ガイドラインに掲載された。欧州でも欧州消化器内視鏡学会と欧州腹部消化管放射線学会による大腸CT適応ガイドラインでは、大腸CTの検査目的別に声明と推奨が出されている。こうした流れを受け、欧米諸国における検診目的の大腸CTは着実に普及が進んでいる。
日本でも大腸CTと内視鏡による大腸腫瘍検出能の精度比較に関する検討Japanese National CT Colonography Trial(UMIN 2097)、および低用量前処置法を用いた大腸CTの検査精度に関する多施設共同試験(UMIN 6665)が行われた。日本の内視鏡専門医の診断をゴールドスタンダードとした検証でも、大腸CTの大腸病変に対する検出精度は先行した欧米の臨床試験と同様に高いことが証明された。
エビデンスの蓄積を経て、日本でも大腸CT検査は健診あるいは、精密検査で大腸内視鏡検査の実施が困難な場合に、大腸内視鏡検査を補完する有用な検査法となるだろう。ただし、大腸CT検査を適切に活用するためには、精度検証に裏打ちされた適切なトレーニング・読影方法および検査手技に基づいて実施するための標準化が必須である。