2014 年 57 巻 2 号 p. 135-142
要旨: ミトコンドリア3243点変異による高度難聴を呈した6歳の小児に対し, 既存補聴器を併用した聴力保存型人工内耳埋め込み手術を経験し, 17カ月にわたって経過観察を行った。右耳の既存補聴器と人工内耳併用によって, CI-2004幼児用3語文で100%, 同学童用3 ~ 5語文で90%の聴取が可能となり, 左補聴器との bimodal 聴取が可能となった。術後17カ月目では 125, 250, 500Hz の3周波数の域値上昇の平均値は 6.7dB にとどまった。既存補聴器を用いることで EAS 専用スピーチプロセッサの音響刺激機能を補完できた。低音域に残聴があるが既知の高度難聴を来しうる難聴遺伝子変異を有しており, かつ, 進行性が予想される場合には小児においても聴力保存型人工内耳の適応が検討されても良いと考える。