2013 年 62 巻 6 号 p. 507-512
雨水中の放射性核種分析は,試料水を蒸発乾固もしくは吸着捕集法等で前処理してから測定する方法が一般的である.しかし,前処理に長時間を要するため短寿命放射性核種の分析には向いていない.そこで,迅速・簡便に金属類を分離濃縮できる固相ディスクで雨水中の放射性核種を濃縮し,γ線スペクトロメトリーで分析を試みた.全金属類を回収するため2種類のイオン交換樹脂ディスクを使用した.雨水を通水したディスクのγ線スペクトルより,天然放射性核種の7Be,212Pb,214Pb,212Bi,214Bi及び人工放射性核種の131I,134Cs,137Csを検出できた.原子吸光光度分析により雨水試料を用いて添加回収実験を行った結果,ほぼ100% の回収率が得られた.この方法は,試料採取終了から測定開始までを最短30分程度で実施できるため,陽及び陰イオン交換樹脂ディスクに濃縮される元素の放射性同位体であれば短寿命核種の分析に有利である.