日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
一般論文(原著)
養豚排水の高度処理に使用後回収した非晶質ケイ酸カルシウム水和物による非放射性セシウム・ストロンチウム,および放射性セシウムの収着
田中 康男三浦 啓一明戸 剛美濃和 信孝戸田 雅也長谷川 輝明
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 85 巻 2 号 p. 179-185

詳細
抄録

非晶質ケイ酸カルシウム水和物(CSH)は,畜舎排水の高度処理(リン除去,色度低減,消毒)に有効であり,使用後の回収物はリン酸肥料として利用可能であることが既往研究により確認されている.CSHによるセシウムおよびストロンチウムの収着能を調べたところ,未使用CSHは収着能が無いのに対して,回収CSHはセシウム(非放射性,放射性)およびストロンチウム(非放射性)の収着能を有することが確認された.回収CSHのみに収着能が発現する理由は明らかではないが,セシウムの場合は,排水の高度処理の過程でCSHにリン酸が吸着し,CSHの表面電荷がマイナスに変化することで静電的な吸着が生ずるようになった可能性もある.また,ストロンチウムについては,回収CSHに含まれると考えられるヒドロキシアパタイトのカルシウムとイオン交換反応を起こした可能性がある.回収CSHを肥料利用した場合に,そのセシウム収着能が土壌中または堆肥中セシウムの植物への移行率に何らかの影響を与えるかどうか今後の検討課題である.

著者関連情報
© 2014 公益社団法人 日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top