応用生態工学
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事例研究
ブルーギル (Lepomis macrochirus) の個体群モデルを用いた駆除対策への示唆
岩崎 雄一秋田 鉄也加茂 将史
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2012 年 15 巻 2 号 p. 207-212

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抄録

外来種管理において,実施する対策が対象生物種の個体数低減または根絶にどの程度有効かについての情報を得ることは有用である.本研究では,全国各地で生息が確認されている外来魚であるブルーギルを対象に,米国 Hyco 湖で構築された個体群モデルを利用して,卵,未成魚,成魚の駆除割合がブルーギルの平衡個体数に及ぼす影響を評価した.卵,未成魚,成魚の駆除を個別に行った場合に平衡個体数を 1 未満にするには,84~92%の高い駆除割合が必要であった.他方,卵の駆除割合が一定の条件下において成魚または未成魚の駆除を加えることで,個別に駆除対策を実施するよりも少ない駆除割合で根絶に導くことができることが示された.さらに,卵及び成魚の個別駆除については,それぞれ約 80%,60% 未満の駆除割合までは平衡個体数が増加し,それを超えると個体数が減少するという一山型の応答を示した.これは,当該個体群モデルにおいて産卵数と 0 歳魚の関係にリッカー型の密度効果を仮定しているためである.したがって,実際の管理においてブルーギル個体群の動態に作用する密度効果の影響を把握・推定することも重要であると考えられる.以上の結果が日本における現実の駆除事例にどの程度適用できるかは留意が必要であるが,個体群モデルを用いることで複数の駆除対策の効果を予測・比較することができ,より効果的な対策の選択を支援することが可能になるだろう.

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© 2012 応用生態工学会
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