日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規選択的DPP-4阻害薬テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(テネリア®錠)の薬理学的特長と臨床効果
合田 真貴赤星 文彦石井 伸一寺田 龍司林 義治
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2013 年 142 巻 3 号 p. 134-143

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抄録

テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(テネリア®錠)は,dipeptidyl peptidase-4(DPP-4)を選択的に阻害し血糖値を低下させる本邦で新規に開発された2型糖尿病治療薬である.テネリグリプチンは連続した5つの環を構造上の特徴とする薬剤で,その各々の構造がDPP-4活性部位の複数のアミノ酸に結合・作用して,強い酵素阻害活性を発揮する.非臨床薬理試験において,テネリグリプチンはヒト組換えDPP-4活性を濃度依存的に阻害し,そのIC50値は0.89 nMであった.ヒトおよびラットの血漿中DPP-4阻害作用のIC50値はそれぞれ1.75 nMおよび1.14 nMで,他のDPP-4阻害薬(シタグリプチンおよびビルダグリプチン)と比較して強いことが示された.In vivoにおいてもテネリグリプチンは,経口投与でラットの血漿中DPP-4活性を阻害し,その作用は他のDPP-4阻害薬よりも強く持続的であった.Zucker fattyラットへの単回投与でテネリグリプチンは,投与12時間後に実施した経口混合糖液負荷による血糖上昇も抑制し,持続的な薬効を示した.健康成人を対象にした臨床試験において,テネリグリプチン20 mgを単回経口投与した時の血漿中未変化体濃度の半減期は24.2時間であり,反復投与しても薬物の蓄積性は認められず,7日以内に定常状態に達した.また腎機能障害者においても,テネリグリプチンは著明な血中濃度上昇を生じないことを確認している.2型糖尿病患者を対象とした臨床薬理試験において,テネリグリプチンは1日1回朝食前の投与で,朝食,昼食および夕食後の食後高血糖を抑制し,終日にわたる良好な血糖改善作用を示した.この時テネリグリプチンは血漿中DPP-4活性を24時間にわたり阻害し,活性型glucagon-like peptide-1(GLP-1)濃度増加作用が夕食時も持続した.2型糖尿病患者への長期投与試験において,テネリグリプチンは単独投与で52週間にわたりHbA1c低下作用を示し,スルホニルウレア(SU)系薬剤との併用試験においても,52週にわたって安定した血糖コントロールを示した.国内で実施された全ての臨床試験を統合した解析において,副作用発現率は10.0%であった.テネリグリプチンの低血糖症の発現頻度はプラセボと同程度で,重篤な低血糖症は認められなかった.結論として,テネリグリプチンは強力かつ持続的なDPP-4阻害作用に基づき,1日1回投与で24時間にわたる血糖コントロールが可能で,安全性が高く,服薬の利便性が高い新規の2型糖尿病治療薬として期待できる.

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