肺癌
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症例
小細胞肺癌に対する化学療法中に発症した腸管嚢腫様気腫症の1例
石綿 司須田 明安部 光洋寒竹 政司篠崎 俊秀
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ジャーナル オープンアクセス

2013 年 53 巻 2 号 p. 144-149

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抄録

背景.腸管嚢腫様気腫症は,腸管の粘膜下から漿膜下に含気性嚢腫が生じる比較的稀な疾患である.原因の1つとして薬剤性が指摘されているが,肺癌に対する化学療法中に生じた症例の報告は少ない.症例.83歳男性.小細胞肺癌(cT4N3M1b Stage IV)に対し,second lineとしてアムルビシン初回投与を行った.投与後第7病日より下痢が生じ,第9病日にはgrade 3の好中球減少を生じた.第10病日に腹部膨満を訴え,胸部X線にて右横隔膜下に遊離ガスを,腹部CTでは腸管外遊離ガスおよび回腸壁内ガス像を認めた.腸管嚢腫様気腫症と診断し,バイタルサインおよび理学所見は腹膜炎を示唆しないことから,開腹手術は行わずに保存加療とした.第14病日には腹部膨満は著明な改善を認め,第15病日の腹部CTでは腸管壁外および回腸壁内ガス像は消失していた.その後アムルビシン再投与を行うも腸管嚢腫様気腫症の再発はきたさなかった.結論.化学療法中に腸管嚢腫様気腫症をきたすことがあり,腹部症状を呈した場合には本疾患を念頭に置く必要がある.

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© 2013 日本肺癌学会
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