2013 年 53 巻 3 号 p. 270-276
背景.非小細胞肺癌に対するサルベージ手術に明確なガイドラインはない.今回,手術適応のない局所進行肺腺癌に対し全身化学療法後にサルベージ手術を行なった1例を経験したので,報告する.症例.71歳,女性.左上葉肺腺癌cT1bN3M0(IIIB)に対しシスプラチン+ドセタキセルによる全身化学療法を6コース,カルボプラチン+ペメトレキセドによる全身化学療法を6コース施行し,partial responseが得られた.その後,原発巣が再増大し,ペメトレキセド単剤による全身化学療法が6コース施行されたが奏効せず,PET検査では原発巣に異常集積を認めるのみであったため,ycT1aN0M0(IA)の診断で肺動脈形成を伴う左上葉切除術を行なった.術後病理でypT1aN2M0(IIIA)と診断されたため,放射線治療(50 Gy)を追加した.術後1年経過したが無再発生存中である.結論.本症例に関しては,今後の厳重な経過観察が必要と考える.手術適応のない局所進行肺癌においてもサルベージ手術により,局所制御が得られる可能性が示唆された.ただし,その適応については,根治性と手術侵襲のバランスから個々に判断する必要がある.