人間生活文化研究
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南極大陸宗谷海岸の親子池湖底堆積物コアによる完新世における古環境学的研究
井上 源喜本多 英介谷 幸則瀬戸 浩二渡邊 隆広大谷 修司中村 俊夫伊村 智
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2013 年 2013 巻 23 号 p. 189-197

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抄録

本研究では南極宗谷海岸の親子池の湖底堆積物コア(Ok4C-1,長さ135 cm)の地質学的解析,加速器による14C年代測定,クロロフィル化合物・カロチノイド分析ならびに藻類等の顕微鏡観察により,完新世における宗谷海岸地域の環境変動と親子池の古陸水学的変遷を解明した.親子池の湖底堆積物コアの堆積年代,平均堆積速度および平均隆起速度は,それぞれca.220~2,170 cal BP,0.69 mm/yおよび2.2 mm/yであった.TOC濃度は深さ135~63.25 cmでは低かったが,60.95~0 cmでは大きく増加した.クロロフィル化合物およびカロチノイド測定の結果,淡水に生息する緑藻に由来する色素は浅い層(60.95 ~0 cm)で検出され,海水に生息する珪藻に由来する色素は深い層(135~74.75 cm)で検出された.また,緑色硫黄バクテリアに由来するchlorobacteneは深さ74.75~60.95 cmで検出され,氷河の後退に伴う隆起により沿岸海から成層した塩湖が発達したと考えられる.深さ1.15 cm,28.75 cmおよび56.35 cmでは淡水種のLeptolyngbya spp.やCosmarium spp.が優占種であった.また,深度56.35 cmでもこれらの形態が保存されていたのは極めて珍しい.親子池の湖底堆積物は135~74.75 cm (ca.2,190 ~1,300 cal BP) では海水環境で堆積し,深度74.75~60.95 cm (ca.1,300~1,100 cal BP) は成層した塩湖,深度60.95~0 cm (ca.1,100 ~220 cal BP) では淡水環境で堆積したと考えられる.

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© 2013 大妻女子大学人間生活文化研究所
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