日本呼吸器外科学会雑誌
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症例
縦隔へ高度に浸潤した唾液腺型肺悪性腫瘍の1例
田中 里奈青木 稔橋本 公夫石川 浩之大竹 洋介
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2014 年 28 巻 6 号 p. 816-821

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抄録

症例は74歳女性.腹水貯留と下肢浮腫のため当院に紹介受診となった.造影CTでは,中縦隔に主座をもつ10×7 cm大の境界不明瞭な腫瘤を認め下大静脈は高度に狭窄していた.開胸下に腫瘍摘出術を施行.下大静脈との剥離は可能で,右肺下葉,心膜,横隔膜を合併切除し腫瘍を摘出した.下大静脈壁は一部変色しており腫瘍の浸潤と考えられたが,心膜や横隔膜など他の剥離面にも腫瘍は露出しており,完全切除は困難であったため,下大静脈の合併切除は行わなかった.術後,下大静脈の狭窄は解除され,腹水と下肢浮腫はすみやかに改善したが,術後11ヵ月で腫瘍の進行により死亡した.病理組織学的には,肺原発の唾液腺型腫瘍で,典型的なcribriform patternはみられないものの,腺様嚢胞癌が最も考えられた.本例は,文献的報告とは異なる,稀な進展形式と高い悪性度を示した.

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