2013 年 13 巻 4 号 p. 4_19-4_37
本稿は、2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖地震での茨城県への津波に関して、地理情報、アンケート・ヒアリング調査を組み合わせて避難行動の実態を検証した。茨城県アンケートで津波を想起した人は14%であり、多くの人々は避難開始が遅れがちな用事後避難をしていた。そこで、避難警報の認知、津波浸水想定区域やハザードマップの認知、浸水想定区域からの距離などが人々の避難開始時間に与えた影響を検証した。その結果、避難開始時間は、避難場所を知っていると早い、ハザードマップと浸水想定区域の両方を見たことがあるとやや早い、浸水想定区域内にいた人は早い、ということなどが明らかになった。一方で用事後避難は、避難準備、戸締まり、家族の安否確認などが主な理由であり、個人の認識や家庭状況が避難開始時間を大きく左右した。将来起こりうる被害を軽減するためには、今回の反省を踏まえて、避難行動や地域防災計画を再検討することが求められる。