景観生態学
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原著
都市近郊に位置する谷津景観の変遷過程に及ぼす地形と土地所有形態の影響
高橋 一之原 慶太郎
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2013 年 18 巻 1 号 p. 57-72

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抄録

本研究は,谷津景観の変遷過程を把握する上で,地形と土地所有形態という2つの視点から,景観構造の変化とその要因について解析したものである.千葉県佐倉市畔田周辺地域を対象とし,年代の異なる6時期の空中写真と迅速測図を用いて,15種類の景観要素タイプに分類し,約125年間の谷津景観の変遷過程を把握した.また国土数値情報5 mメッシュ標高を用いて,「低地-台地-斜面」から構成される地形分類図を作成した.さらに,佐倉市の資料を用いて土地所有形態別地図を作成し,地形別・土地所有形態別に景観の変遷過程を比較した.その結果,低地においては,1970年以降に水田の耕作放棄が始まり,1980年以降には,一部で圃場整備された水田が急激に増加した.一方,台地上においては,1882年に台地全体の71%を占めていた森林は,2008年には43%まで減少した.これに対し,斜面の森林は,概ね斜面全体の70%前後を推移した.また台地と斜面の森林を構成する景観要素の推移としては,かつて下総台地に広範に分布していたアカマツ植林が,1990年にかけて完全に消失した.スギ植林も1980年以降から急激に減少し,アカマツ植林やスギ植林の衰退に呼応して落葉広葉樹林が増加した.さらに土地所有形態の違いによって,水田が耕作放棄されていく時期が異なることが明らかになった.本研究の結果から,地形の要因だけでなく,土地所有形態によって谷津景観の変遷過程が異なることが明らかになった.

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© 2013 日本景観生態学会
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