日本大腸肛門病学会雑誌
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症例報告
上行結腸癌治癒切除後6年目に下大静脈腫瘍塞栓で発症した右副腎転移再発の1例
森 義之飯野 弥須藤 誠藤井 秀樹
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2013 年 66 巻 8 号 p. 610-614

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抄録

症例は,78歳女性.2005年7月上行結腸癌に対し結腸右半切除術,D3リンパ節郭清術を施行した.病理所見は,中分化管状腺癌(一部に粘液癌,低分化腺癌を含む),2型,pSS,pN0,fStage IIであった.術後4年目に原発右乳癌を認め,右乳房切除術を施行した.病理所見は,T1b,N0,M0,Stage Iであった.大腸癌術後5年目,再発を認めず,大腸癌に対しては終診とした.同年11月の乳腺外来で,血清CEA86.0ng/mlと,12月には234.8ng/mlとさらに上昇し,CT検査で下大静脈腫瘍塞栓を認め,大腸癌の再発と診断した.下大静脈腫瘍塞栓は肝静脈まで伸展しており摘出不能であった.mFOLFOX6を合計4回施行したが,全身状態が悪化し,7月に死亡し,病理解剖を施行した.粘液癌の右腎,右副腎への転移,下大静脈,右心房,右肺動脈,肝静脈,両側腎静脈への浸潤を認めた.上行結腸癌の副腎転移再発が下大静脈に浸潤,増殖し,肝静脈,腎静脈に腫瘍塞栓を形成,それらの臓器の血液還流異常による多臓器不全と診断された.

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© 2013 日本大腸肛門病学会

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