日本冠疾患学会雑誌
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原著
瀰漫性の石灰化病変を有する透析患者に対する冠動脈バイパス術の治療戦略:術前心臓CTと両側内胸動脈による積極的OPCAB
中村 雅則中島 智博黒田 陽介宇塚 武司渡辺 祝安福田 洋之甲谷 哲郎
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2013 年 19 巻 2 号 p. 124-132

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抄録

【目的】透析(HD)患者における冠動脈バイパス術(CABG)はその手術成績も悪く,瀰漫性の石灰化により動脈グラフトでの完全血行再建が困難となることも多い.我々はHD患者に対して,術前心臓CTを施行し,石灰化の部位,両側内胸動脈で(BITA)の吻合部位を確認し,積極的BITAを使用した完全血行再建をOPCABで行っている.その初期成績を検討し治療戦略の工夫と術式の妥当性を検討した.【対象】2010年4月から2011年7月までの虚血性僧帽弁閉鎖不全(IMR)を含んだHD患者のCABG 13例.HD期間は7.2±6年で,9/13が糖尿病腎症であった.【結果】IMR 2例を除き,全例でOPCABが完遂され,平均吻合数は2.9±1本,術中カテコールアミンの使用は1例のみであった.早期死亡なし.in situ BITA使用率は89%,完全血行再建率は92%と非HD群と同等であった.人工呼吸器からの離脱までの中央値も4.8時間で,食事開始2日目,歩行開始2.5日目と早期離床が図られた.ITAの開存率は100%で,Fitz Gibbon Aが96%を占めた.術後生存率は,1年で77%であったが,他因死を除く1年心事故回避率は100%であった.【結論】瀰漫性石灰化のHD患者において術前心臓CTはBITAの吻合部決定に重要であり,in situのBITAによるOPCABでの完全血行再建は初期成績で問題なく,長期成績での有効な術式の可能性を残すと考えられた.

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© 2013 日本冠疾患学会
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