日本救急医学会雑誌
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症例報告
鈍的腹部外傷による虚血性横行結腸壊死に対して診断的腹腔鏡が有用であった1例
福田 明輝中野 良太金子 一郎別府 賢
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2013 年 24 巻 4 号 p. 213-218

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抄録

患者は48歳の男性。トラック運転中に前方トラックに追突し,当院に救急搬送された。初診時,上腹部に圧痛は認めたが腹膜刺激症状はなく,腹部CTでは横行結腸間膜周囲の少量の血腫とわずかな腹水を認め,腹腔内遊離ガスと横行結腸壁肥厚は認めなかった。経過観察のため入院し,発熱や上腹部の圧痛の増悪所見もなく,またUSで腹水の増加所見も認めずに経過していた。症状の増悪は認めなかったが,受傷翌日のfollow upの腹部CTで横行結腸の限局性壁肥厚を認めたため診断的腹腔鏡を行った。腹腔鏡下に腹腔内を検索すると横行結腸間膜に手拳大の欠損部位を認め,その血管支配領域(横行結腸)に虚血性腸管壊死(非穿孔)が確認された。引き続いて正中切開で開腹し横行結腸部分切除術を行った。術後に創感染を認め,術後20日目に退院となった。鈍的外傷における診断的腹腔鏡は,有効な治療戦略の一つであると言える。

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© 2013 日本救急医学会
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