日本救急医学会雑誌
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症例報告
糖尿病性ケトアシドーシスによる高度高血糖の治療に人工膵臓が有用であった1例
山本 賢太郎矢田部 智昭山下 幸一長野 修花崎 和弘横山 正尚
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2014 年 25 巻 6 号 p. 261-266

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抄録

糖尿病性ケトアシドーシスでは,アシデミア,脱水,電解質異常に対する治療とともに血糖管理が重要となる。今回,人工膵臓を使用し,低血糖を起こすことなく,安全に血糖コントロールが可能であった症例を経験した。症例は59歳の男性。30歳頃に高血糖を指摘されたが,55歳時まで加療,検診を拒否していた。55歳時に糖尿病と診断され,糖尿病性網膜症,糖尿病性腎症を合併していた。57歳時よりインスリン療法を導入された。受診2日前に飲酒し,前日より,嘔吐,口渇感を自覚するようになり,食事ができないためインスリンを使用しなかった。嘔吐が持続し,口渇感も著明になったため,本人が救急要請し,当院に搬送された。当院到着後,意識が急速に低下し,収縮期血圧は60mmHgまで低下し,下顎呼吸も出現した。直ちに,気管挿管を行い,人工呼吸管理を開始した。検査所見から糖尿病性ケトアシドーシスと診断し,来院30分後にICUに入室した。輸液などで来院3時間後には,血圧や意識は改善し,抜管した。高血糖に対して来院4時間後に人工膵臓(日機装,東京)による自動血糖管理を開始した。100mg/dL/hr 以下の補正に留め,目標血糖値を100mg/dLずつ適宜,変更した。その結果,来院12時間後には血糖値は320mg/dLとなった。翌日には血糖値は259mg/dLとなり,循環,呼吸も落ち着いていたので,ICUを退室した。その後,インスリン投与量の調節を行い,第16病日に後遺症なく自宅退院となった。糖尿病性ケトアシドーシス患者において,人工膵臓を使用することで低血糖や急激な血糖値の低下を来すことなく安全に血糖管理を行うことができた。脱血不良による中断,校正時間の短縮など解決すべき課題はあるが,救急現場における血糖管理の手段として有用である可能性がある。

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© 2014 日本救急医学会
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