日本外科系連合学会誌
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症例報告
下部胆管癌を疑い切除した自己免疫性膵炎2例の検討
中川 綾子海保 隆柳澤 真司外川 明新村 兼康岡本 亮西村 真樹小林 壮一土屋 俊一宮崎 勝
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キーワード: 自己免疫性膵炎, AIP, IgG4
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2013 年 38 巻 4 号 p. 880-886

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抄録

自己免疫性膵炎(AIP:autoimmune pancreatitis)は診断基準が確立され広く認知されるようになったが,未だ鑑別困難な症例も存在する.下部胆管狭窄はAIPにおける高頻度随伴病変であるが,胆管癌を疑い切除されたAIP2例を経験したので報告する.
1例目は66歳女性.アルコール性慢性膵炎の既往.糖尿病で通院中,肝機能異常を指摘された.下部胆管癌と慢性膵炎の合併と診断し手術.2例目は61歳男性.糖尿病で通院中に血糖コントロール不良,肝機能異常を指摘された.膵頭部の腫瘤,膵管不整狭細化と下部胆管狭窄を認めた.血清IgG,IgG4は正常,乳頭部の生検でもIgG4陽性細胞は少量でAIPの確定診断には至らず,下部胆管癌と腫瘤形成性膵炎の合併と診断し手術.いずれの症例も最終病理組織診断はAIPであった.血清IgG4低値症例,慢性膵炎の既往を有する症例などでは今後慎重な対応が望まれる.

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© 2013 日本外科系連合学会
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