日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
左鎖骨下動脈瘤を合併した弓部大動脈瘤に対して Frozen elephant trunk 法による左鎖骨下動脈瘤 exclusion,全弓部大動脈置換術を施行した1例
中里 太郎仲村 輝也関谷 直純内田 直里澤 芳樹
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2012 年 41 巻 3 号 p. 113-116

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抄録

左鎖骨下動脈瘤を合併した弓部大動脈瘤の報告は稀であり,そのアプローチには工夫を要する.今回Open distal anastomosisによるステントグラフト内挿術(Frozen elephant trunk法)を施行し良好な結果を得たので報告する.症例は61歳男性.高血圧と腎機能障害(血清クレアチニン1.5~2.0 mg/dl)の既往あり.近医施行の胸部レントゲンにて異常陰影を指摘され,胸部CTにて遠位弓部大動脈瘤(52 mm),および左鎖骨下動脈起始部に動脈瘤(30 mm)を認めたため,手術目的に当科へ紹介された.手術は左hemi-collar incision,胸骨正中切開および左鎖骨下切開にてアプローチした.脳分離体外循環,循環停止にて大動脈を左総頸動脈分枝部でtransectionし,末梢側へステントグラフトを内挿することにより,左鎖骨下動脈瘤のinflowを閉鎖した.分枝付き人工血管にて弓部大動脈を再建した.左鎖骨下動脈瘤の末梢は椎骨動脈分岐部より中枢で結紮し空置した.術後経過は良好で,術後19日目に独歩退院となった.術後8カ月目のCTにて胸部大動脈瘤および左鎖骨下動脈瘤の血栓化,縮小を認めた.この術式は二つの瘤を空置するのみであるため,通常の弓部大動脈人工血管置換術に比べて左鎖骨下動脈瘤への直達が不要である,大動脈末梢吻合が容易であるなどの点において有用であるが,今後も定期的なフォローアップを要すると考えられた.

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