2012 年 41 巻 4 号 p. 173-177
症例は69歳,男性.心臓手術,腹部手術の既往を有する.2008年12月に転倒して脳挫傷を受傷した.他院に入院中の2009年2月に胸部下行大動脈からの出血と診断され,当院に転院した.膿瘍形成を伴う感染性遠位胸部下行大動脈瘤破裂と診断し,in situ人工血管置換術を行った.人工血管には左広背筋を有茎筋弁として密着して巻き,感染対策とした.術後は広背筋剥離部の感染が遷延し,最終的には救命できなかった.しかし,左広背筋を巻くといった工夫を凝らすことにより,約8カ月間のADLが保たれた入院生活を送ることができた.