日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Aortopulmonary artery fistula の1例
岡田 達治中井 真尚島本 光臣山崎 文郎三浦 友二郎糸永 竜也野村 亮太寺井 恭彦宮野 雄太村田 由祐
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2012 年 41 巻 4 号 p. 195-199

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抄録

弓部大動脈瘤の肺動脈への穿破は稀であるが重篤である.今回われわれは本疾患に対して全弓部人工血管置換術を施行し救命し得たので文献的考察を加えて報告する.症例は74歳男性,主訴は呼吸困難であった.当院搬送の前日より急に呼吸困難を自覚し他院を受診,翌日再診の際に低酸素血症を認め,CTにて胸部大動脈瘤が指摘されたため,精査加療の目的で当科に搬送となった.来院時血圧103/32 mmHg,収縮期雑音を聴取し,Base Excess-16 mmol/l,Swan-Ganz catheterでは心拍出量1.3 l/min/m2,肺動脈圧49/23 mmHgと高度の非代償性鬱血性心不全,低心拍出量症候群を認め,ただちに強心剤とcarperitideの投与を開始した.前医でのCTで大動脈弓部小彎側に突出した瘤と,左肺動脈の圧排を認めた.血行動態の改善後に測定した肺体動脈血流比が3.2であり,弓部大動脈瘤の肺動脈への穿破と診断,手術の方針とした.執刀前の経食道超音波検査で大動脈瘤から左肺動脈へのシャント血流が確認された.手術は胸骨正中切開で,超低体温,選択的脳分離灌流を用いた全弓部人工血管置換術と左肺動脈パッチ形成術を行った.冷却中,心室細動後に主肺動脈を切開し破裂孔を確認,用指的に血流をコントロールして肺を保護した.術後の経過は良好であった.

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