症例は61歳男性で,57歳時から慢性腎不全に対して透析を導入され,59歳時に大動脈弁輪拡張症に対して大動脈基部置換術を施行された.61歳時に発熱,胸部違和感を認め精査を行われた.造影CTにて大動脈基部周囲に仮性瘤,膿瘍の形成を認め感染性心内膜炎と診断された.この症例に対し,感染巣の十分なdebridementを行ったのち,健常な左室心筋に馬心膜ロールを縫着し左室流出路を再建した後,Freestyle弁を心膜ロールの末梢に吻合し大動脈基部再置換術を行った.術後14カ月を経過しているが感染の再燃や縫合部の異常を認めず経過している.本法は良好な視野で健常な左室心筋に心膜ロールを縫合でき,その心膜ロールに確実に人工弁を縫着することが可能である.また膿瘍腔と血流を隔離できるという点においても有用である.