2012 年 41 巻 4 号 p. 215-218
症例は81歳,女性.労作時の息切れを主訴に近医を受診した.胸部Xpで肺うっ血を認め,心不全のため入院加療した.上下肢の血圧差と間欠性跛行を認め,精査したところ石灰化を伴う下行大動脈の狭窄を認めた.降圧剤を内服しているにもかかわらず上肢血圧は167/70 mmHg,ABI(Ankle Brachial Pressure Index)は右0.53,左0.58であった.コントロール不良な高血圧と異型大動脈縮窄症による左室への圧負荷が原因による心不全と診断し,内科的治療の後に手術を施行した.術式は高齢であることを考慮して非解剖学的バイパス術(axillo-bifemoral artery bypass)を8 mmリング付きT字型人工血管にて施行した.術後のABIは右0.83,左0.87に改善し,上肢血圧は132/68 mmHgと良好に管理されるようになり,術後18カ月経過の時点でグラフト開存を確認,心不全の徴候なく経過している.異型大動脈縮窄症は,血圧管理に難渋することが多く,放置すると脳血管障害などを引き起こし予後が不良であるため早期の手術が望まれるが,高齢者に対する手術としてAxillo-bifemoral artery bypass術は低侵襲という利点があり,早期の退院,社会復帰が期待できる.