2012 年 41 巻 5 号 p. 243-246
症例は76歳女性,胸痛と呼吸苦を主訴に入院となった.炎症反応高値,心嚢液貯留,左バルサルバ洞動脈瘤,左冠動脈主幹部(LMT)狭窄が認められ,手術目的に当科紹介となった.左バルサルバ洞の左冠状動脈口の近傍に瘤の形成を認めた.大動脈弁輪の拡大および大動脈弁逆流は認めなかった.バルサルバ洞動脈瘤の原因として感染性を否定できなかったため,感染への抵抗性を期待して自己心膜によるパッチ閉鎖術を行った.瘤の閉鎖に伴い近接した左冠状動脈口を閉鎖したため,左内胸動脈(LITA)と大伏在静脈(SVG)を用いて血行再建を行った.術後の造影CTで左バルサルバ洞動脈瘤は消失し,左冠状動脈へのバイパスは良好に開存していた.術後1年経過し感染徴候はなく,CTで左バルサルバ洞の拡大は認めなかった.