日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
ステントグラフト内挿術における腎保護プロトコールの有用性
青木 淳末澤 孝徳古谷 光久山本 修櫻井 淳
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 42 巻 2 号 p. 114-119

詳細
抄録

2010年からステントグラフト(SG)を用いたSG治療時,Nアセチルシステインの内服,術前後の補液からなる腎保護プロトコールを導入したので検討した.SG治療症例229例(胸部89例,腹部140例)中,術前血清クレアチニン値(CRTN)1.5 mg/dl以上かつ術前estimated glomerular filtration rate(eGFR)50 ml/min/1.73 m2 以下の26例を対象として,腎保護プロトコールが行われた15例(P群)と対照群11例(N群)で検討した.さらに,腎保護プロトコールが用いられなかった192例を対象とし,造影剤腎症(CIN)の発生と術前腎機能の関係を検討した.CINは,CRTN値が術前値より25%以上または,0.5 mg/dl以上増加した場合と定義した.術後,血清CRTN値の変化率は,N群では,術後1,3日に上昇し,術後6日目に術前値に復帰したのに対し,P群では,術後一貫して,術前より低値であり,術後3日目にN群でP群より有意に高かった.CINの発生率は,P群7%,N群45%(p=0.054)とP群で少ない傾向があった.腎保護プロトコールが用いられなかった症例では,CRTN 1 mg/dl以上,かつeGFR 50 ml/min/1.73 m2 以下の55例中16例(29%)でCINを発症したが,これ以外の症例では,137例中1例(0.7%)であった.SG治療において腎保護プロトコールは有用であり,今後,CRTN 1.0 mg/dl以上,eGFR 50 ml/min/1.73 m2 以下の症例に適用すべきと思われた.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top