2013 年 42 巻 3 号 p. 215-218
症例は77歳の男性.健診の腹部超音波検査にて腹部大動脈瘤を指摘され,当院に紹介された.胸腹部MDCT検査を施行したところ,腹部大動脈瘤に加え,左鎖骨下動脈の基始部および遠位弓部大動脈に動脈瘤が存在することが判明した.腹部大動脈瘤は最大短径40 mmであったが,鎖骨下動脈瘤は最大短径30 mmで嚢状の形態であったため,胸部手術を先行して行うこととした.手術は,血管内治療を行う方針とし,腕頭・左総頸動脈共通幹直後から近位下行大動脈内にステントグラフト(TEVAR)を留置した後,左鎖骨下動脈の瘤遠位部をコイルを用いて塞栓した.術後経過は良好で,特に合併症なく術後12日目に退院した.鎖骨下動脈瘤は稀な疾患である.胸腔内に存在する左鎖骨下動脈瘤の手術は,弓部全置換となる場合もあり,末梢血管の手術としては侵襲が大である.今回われわれが施行したTEVARおよびコイル塞栓術による治療は,侵襲が少なく,今後,本疾患に対する外科的治療の有用な選択肢のひとつとなると考える.