日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
大動脈炎症候群を伴った大動脈弁置換術後弁周囲逆流の1例
—その特殊性と術式の工夫—
安田 章沢徳永 滋彦町田 大輔磯松 幸尚益田 宗孝
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2013 年 42 巻 3 号 p. 223-227

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抄録

大動脈弁置換術後2年で弁座の動揺および弁周囲逆流を来し,大動脈基部置換術を要した大動脈炎症候群患者症例を経験したためその特殊性と術式の工夫を含め報告する.症例は65歳男性.大動脈炎症候群に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症のため3年前に機械弁による大動脈弁置換術を施行した.術後ステロイドは投与されていなかった.術2年後より弁座の動揺,その1年後に弁周囲逆流を認め再手術の方針となった.バルサルバ洞と上行大動脈は拡大し,大動脈縫合線の仮性瘤を認めた.また,中等度の僧帽弁閉鎖不全も合併していた.手術は機械弁による大動脈基部置換術(J-graft shield® 24 mm+SJM regent® 21 mm),近位大動脈弓部置換術(J-graft shield® 24 mm),僧帽弁輪形成術(IMR ET logix® ring 28 mm)を施行した.術中所見では上行大動脈周囲の癒着が非常に強く,大動脈基部から上行大動脈にかけ著明な壁の肥厚を認めた.機械弁を除去すると弁輪は非常に脆弱であった.自己心膜で弁輪の補強を行い,さらに弁輪下部は短くtrimingした人工血管リングで補強し基部置換術を遂行した.術後ステロイドを投与,現在炎症反応は安定し外来経過観察中である.大動脈炎による炎症が強く弁輪が脆弱な場合は組織の補強と術後の炎症のコントロールが肝要である.

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