2013 年 42 巻 1 号 p. 23-29
中枢側ネック長が10 mm以下の腹部大動脈瘤に対して,術中に自作開窓を作製したZenithステントグラフトシステム(自作開窓型Zenith)を用いて,ステントグラフト内挿術(EVAR)を11例に対して施行した(Fene群).これらの症例を,当院で通常のZenithによるEVARを施行した43例(IFU群)と比較検討した.Fene群は,全例重篤な並存疾患を有し,破裂によるショック例が2例あった.手術時間には有意差を認めず,留置・バルーン圧着後の造影でのType Ia endoleakの頻度(Fene群36%,IFU群26%,p=0.475),10分間のバルーン再圧着でも消失しないType Ia endoleakに対するPalmaz留置の頻度(Fene群27%,IFU群9%,p=0.140)にも有意差を認めず,最終造影にてType Ia endoleakを認めた症例はなかった.開窓した18本の腎動脈は,術中造影にてすべて開存していた.Fene群の破裂例2例を含め,両群とも手術死亡はなかった.術後半年後,Fene群の9例で造影CTが施行され,endoleakは1例でType IIを認めたのみで,Type Iaは認めなかった.これら9例では,開窓した腎動脈は15本すべて開存し,migrationを生じた症例はなかった.長期の経過観察が必要であるが,中枢側ネックが短い症例に対する自作開窓型ZenithによるEVARの初期成績は良好で,有用であると思われた.