日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
腹部大動脈瘤術後遠隔期の下血と貧血の精査中に判明した小径脾動脈瘤の膵管内破裂に対する1治験例
秋本 剛秀北野 満寺西 宏王
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2013 年 42 巻 3 号 p. 246-248

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抄録

脾動脈瘤は腹部内臓動脈瘤のなかでも頻度の高い動脈瘤で,破裂まで無症状で経過し,破裂した場合の病態がさまざまなため診断・治療も多岐にわたる.今回われわれは,長期経過観察中であった小径脾動脈瘤に対し,破裂時期と破裂形態が不明のまま,貧血の精査をしてようやく診断・治療が可能であった稀な破裂例を経験したので報告する.74歳男性.2006年に当科で腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を受けた.このとき,最大径16 mmの脾動脈瘤が指摘され,年1回のCTにより経過観察していた.2010年12月まで脾動脈瘤径に著変はなかった.2011年5月に極度の貧血と便潜血を呈し,消化器科にて造影CT検査や上部,下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡検査を施行したが出血源が不明であった.同年8月脾動脈瘤破裂による膵管内出血を想定し,同年9月カテーテル塞栓術により,貧血は改善した.今後,画像診断の普及により小径内臓動脈瘤が指摘されることが多くなると予想され,心臓血管外科への診察依頼が増加すると思われる.成長の経過,近接臓器との密着具合などから管腔内出血の可能性も念頭に置き,経過観察することが必要と考えられた.手術の場合,周辺臓器の切除や再建が必要となることがあり,他科との連携を図り,治療介入時期を逃さないよう努めることが肝要と思われた.

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