2013 年 42 巻 4 号 p. 289-292
症例は65歳,男性.嗄声を主訴とし,胸部レントゲン検査,CT検査にて右鎖骨下動脈瘤を指摘された.動脈瘤は最大径85 mmで壁在血栓を伴い,気管を左方に圧排し,気道狭窄を来していた.麻酔導入時の換気不全に備え補助循環装置を準備のうえ,麻酔を開始した.慎重に麻酔導入を行うことで補助循環を用いることなく麻酔管理が可能であった.手術は右鎖骨下切開と胸骨部分正中切開により,動脈瘤の末梢と中枢にアプローチし,瘤切除,人工血管置換術を施行した.術後経過は良好で,術後気道狭窄は改善した.右鎖骨下切開と胸骨部分正中切開の組合せは本例のような巨大右鎖骨下動脈瘤の手術では有効な方法であった.また,術前より気道狭窄を来している症例では,麻酔科と綿密な協議を行ったうえで慎重な麻酔管理をすることが重要であると考える.