日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
心臓血管外科手術における手術部位感染予防
——サーベイランスを用いた院内感染対策室(ICT)と外科医の連携——
庄村 遊岡田 行功新改 法子那須 通寛藤原 洋小山 忠明湯崎 充村下 貴志福永 直人小西 康信
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 42 巻 5 号 p. 377-383

詳細
抄録

当科では感染対策室(Infection Control Team, ICT)と協調して,2009年より手術部位感染(Surgical site infection, SSI)対策およびサーベイランスを開始したが,2011年よりICTと外科医の連携を強め,新たな対策を講じた.その取組みと結果について報告する.2011年1~6月に,当科にて施行した心臓血管外科手術118例(A群)を対象とし,過去2年間の469例(B群)と比較した.以前からの対策は1)術前鼻腔MRSAスクリーニング,2)術前口腔内ケア,3)予防抗菌剤プロトコール,4)周術期血糖管理,5)ドレーン早期抜去であった.2011年からの追加対策は6)対策遵守率およびサーベイランスの定期的な公表,7)術中2重手袋および毛髪/耳を覆う追加シール材の着用奨励およびICTと外科医による創部回診,8)血糖管理の強化である.患者背景には両群で差を認めなかったが,手術時間はA群400±116,B群434±145 minとA群で有意に短縮した.対策遵守において術中抗菌剤プロトコール遵守率はA群99,B群93%,術後1日目の血糖コントロール遵守率はA群81,B群71%で,A群で有意に高く,ドレーン挿入期間はA群2.9±1.8,B群3.6±2.9日とA群で有意に短縮した.SSI発生率はA群0.8%で,B群6.0%と比べ有意に減少した.SSI対策およびサーベイランスの活用を通して,ICTと外科医の連携を強化することが,SSI減少につながる.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top