日本心臓血管外科学会雑誌
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原著
Fontan 術後遠隔期循環動態と肝線維化マーカーの関連性に関する検討
日隈 智憲岩城 隆馬深原 一晃山下 昭雄土居 寿男武内 克憲名倉 里織大高 慎吾芳村 直樹
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2013 年 42 巻 6 号 p. 457-461

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抄録

【背景】Fontan症例では静脈圧の上昇による遠隔期のうっ血性肝炎・肝硬変が報告されている.近年,その指標として肝線維化マーカーが測定され始めているが,それらとFontan循環との関連性はいまだ明らかではない.【方法】当院で経過観察されているFontan術後患者(Fontan completion : 1994年3月~2010年7月)で肝線維化マーカー(ヒアルロン酸:HA,レチノール酸結合蛋白:RBP,P-III-P,IV型コラーゲン7S : 4C7S,IV型コラーゲン:4Cの5種類)が測定され,かつカテーテル検査(肺動脈圧:PAP,PA index : PAI,肺血管抵抗:Rp,駆出率:EF,房室弁逆流:AVVR,心係数:CI)が行われている51例(計57回の検査)を対象とした.全症例(57件),術後1~2年(31例),術後4~6年(17例)および術後8~11年(9例)のカテーテル検査データと線維化マーカーとの相関を検討し,さらに全症例で線維化マーカーの正常群と異常群のカテーテル検査値の差を単変量および多変量にて解析した.【結果】全体ではHAでRp,4C7SでPAPと相関が認められた.また,HAでPAPとEF,4C7SでRp,4CでPAPと弱い相関が認められた.術後1~2年ではHAにRp,4C7Sと4CにPAPとの相関が認められ,術後4~6年では4C7Sと4CにPAPとの相関が認められた.術後8~11年ではHAにPAPとEF,4C7SにAVVRとの強い相関が認められた.HAと4C7Sでは経年的にPAPとの相関が強くなる傾向があった.その他のマーカーには一貫した傾向は認められないものの,PAP,Rpとの相関が比較的強いものが多く,Fontan循環を反映した結果となった.短期・中期遠隔期では明らかではないが,術後10年前後の長期遠隔期には心機能の指標となるEFやAVVRとの強い相関がHAや4C7Sで見られた.HA,RBP,P-III-P,4C7S,4Cの各カットオフ値を50 ng/ml,2.5 mg/dl,1.0 U/ml,6.0 ng/ml,200 ng/mlとし,各マーカーの正常群と異常群との間で,血行動態の指標を比較検討した.単変量解析では,4C7SにのみPAPに2群間での有意差が認められた.多変量解析では4C7SでPAPのみに有意差が認められた.また,各マーカーの重回帰分析ではHAはRpとEF,4C7Sと4CはPAPで予測されることが判った.【結語】HA,4C7Sはフォンタン術後遠隔期の肝線維化の指標となる可能性があり得ると考えられた.また,長期遠隔期には心機能をも反映する可能性が示唆された.

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