2013 年 42 巻 6 号 p. 480-484
難治性の拡張障害による心不全症状を呈した心膜悪性中皮腫の1例を経験した.症例は67歳,男性.下腿浮腫を中心とした右心不全症状で発症し,入院加療を行い心不全は軽減したが,3カ月後に顔面浮腫,胸水が出現し,心不全の悪化として再入院管理となった.急速に進行したびまん性心膜肥厚による収縮性心膜炎により心不全が増悪するため,心膜開窓を目的に手術を行ったが心膜は全周にわたり肥厚著明で心筋組織と強固に癒着していたため,前面を広い範囲で開窓するにとどまった.術中診断はできず病理検査のカルレチニン染色陽性で悪性中皮腫と診断したが,術後心不全が増悪し術後22日に永眠された.心膜悪性中皮腫はきわめて稀であり,また術前診断は困難であり,予後不良である.しかし,心膜悪性中皮腫は発生増加が予想されるため,収縮性心膜炎治療においてつねに念頭に置かなくてはならない疾患である.