日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
原著
心拍動下冠動脈バイパス術における心膜左側切開の有用性の検討
青木 淳末澤 孝徳古谷 光久山本 修多胡 護
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 42 巻 2 号 p. 83-88

詳細
抄録

心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)において良好な視野展開を得ることを目的とし,2008年に心膜左側切開法を導入したので,心膜正中切開によるOPCABと比較検討した.対象は,2004~2007年に心膜正中切開で施行された待機的OPCAB 62例(M群)と2008~2011年に心膜左側切開で施行された91例(L群)で,術前診断,左室駆出率,手術因子,術後経過について検討した.術前診断は,L群で,陳旧性心筋梗塞および不安定狭心症が有意に多く,左室駆出率40%未満の症例が多い傾向があった.遠位側吻合数は,M群2.3±0.7,L群2.8±1.0とL群で有意に多く(p=0.001),左室駆出率60%未満の症例では,回旋枝・右冠動脈吻合中の収縮期血圧はL群で有意に高かった.手術時間は,M群305±71分,L群223±54分とL群で有意に短かった(p<0.001).術後最大CK-MBは,L群で有意に低く(p=0.005),CK-MBが正常範囲を逸脱した症例も,L群で有意に少なかった(p<0.001).術後ICU在室日数・術後入院日数とも,L群で有意に短かった.グラフト開存率は,左前下行枝(M群94%,L群99%),対角枝(M群85%,L群100%)では,有意差を認めなかったが,回旋枝(M群75%,L群98%,p=0.001),右冠動脈(M群81%,L群98%,p=0.014)では,L群で有意に良好であった.OPCABにおいて,心膜左側切開は,有用と思われた.

著者関連情報
© 2013 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top