日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
症例報告
大動脈-右室交通を合併した感染性心内膜炎に対し大動脈基部置換術およびパッチ閉鎖術を施行した1例
瀬尾 浩之藤井 弘通青山 孝信笹子 佳門
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 43 巻 3 号 p. 118-123

詳細
抄録

症例は62歳の男性,I 型糖尿病の既往があり,発熱および全身倦怠感を主訴に外来受診した.血液検査にて炎症反応高値を認め,血液培養よりStreptococcus pneumoniaeが同定された.心エコー検査を施行したところ,大動脈右冠尖,三尖弁中隔尖に疣腫の付着を認め,さらに大動脈弁右冠尖弁輪部に膿瘍腔を形成しており,同部位を介して大動脈-右室交通を認めていた.以上より弁輪部膿瘍に大動脈-右室交通を合併した感染性心内膜炎と診断し緊急手術を施行した.手術は感染組織を徹底的に除去した後,交通孔を右室側および大動脈側よりそれぞれウシ心膜パッチを用いて閉鎖し,大動脈弁輪を再建した.その後,Freestyle® 生体弁を用いてfull root法にて大動脈基部再建術を行った.術後,完全房室ブロックを認めたため永久ペースメーカー留置術を行ったが,経過は良好でCRPも陰転化し,術後46日目に軽快退院した.術後の心エコー検査では,人工弁機能は良好で,膿瘍腔は消失し,大動脈-右室交通の遺残短絡も認めなかった.弁輪部膿瘍を合併した感染性心内膜炎に大動脈-右室交通を合併した症例は稀であり,その治療法には難渋することが多い.このような症例では徹底的な感染巣の除去と確実な交通孔の閉鎖が重要であると思われた.

著者関連情報
© 2014 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top