日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
僧帽弁位感染性心内膜炎に続発した左室仮性瘤の1治験例
武井 祐介柴崎 郁子清水 理葉土屋 豪堀 貴行桒田 俊之井上 有方山田 靖之福田 宏嗣
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2014 年 43 巻 1 号 p. 15-18

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抄録

感染症に続発する左室仮性瘤は比較的珍しい疾患である.今回われわれは感染性心内膜炎に続発した左室仮性瘤を経験し良好な治療結果が得られたので報告する.症例は78歳女性,Leriche症候群に対して右腋窩-両側大腿動脈バイパス術を施行し軽快退院となっていた.約1カ月後に発熱,咳嗽を主訴に当院を受診した.右鼠径部術創の発赤と炎症反応高値から創部感染を疑い精査入院となった.入院時血液培養2セットからメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され,入院数日後に施行した経胸壁心臓超音波で僧帽弁前尖に疣贅様構造物がみられ,感染性心内膜炎の診断で抗菌薬治療を開始した.数日で解熱し炎症所見の改善を認めたが,抗菌薬投与後に撮影したCTにて左室後壁に入院時CTには存在しなかった仮性瘤を認めた.破裂の危険性から手術加療とし,術前に各種画像検査を施行し左室仮性瘤の詳細な局在診断を試みた.仮性瘤は左室後壁の左冠動脈回旋枝と冠静脈洞に隣接しており,瘤入口部は僧帽弁後尖直下にあることが分かった.心外膜側アプローチではそれら周囲構造物の損傷が危惧され,左室内腔側より瘤入口部を牛心膜で縫合閉鎖し仮性瘤を空置することとした.術後経過は良好であり,感染性心内膜炎の再燃なく軽快退院された.また,術後CTで仮性瘤は血栓化し縮小傾向であった.手術方針を決定するうえで画像検査による局在診断は有用であった.

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