日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
Full root 法で使用したステントレス生体弁破裂に対する再基部置換術の経験
福村 好晃松枝 崇元木 達夫来島 敦史大谷 享史
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2014 年 43 巻 4 号 p. 205-208

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抄録

大動脈弁閉鎖不全症を合併する大動脈弁輪拡張症に対し,Prima Plusステントレス生体弁をFull root法で使用し大動脈基部置換術を施行したが,移植65カ月後にブタ大動脈壁破裂による仮性動脈瘤を形成し,再手術を要した症例を経験した.症例は63歳,女性.術後問題なく経過していたが,心不全症状が急速に進行した.3D-CTで大動脈基部に仮性動脈瘤の発生を認め,心エコー検査で重度の僧帽弁閉鎖不全症を認めた.再手術時に,Prima Plus生体弁の無Valsalva洞壁に約2 cmの横方向の亀裂が存在しており,仮性動脈瘤の原因となっていた.また,僧帽弁は両弁尖の肥厚短縮を認めた.機械弁を使用した再大動脈基部置換術と僧帽弁置換術を施行し,術後は良好に経過した.ブタ大動脈壁の病理組織で,宿主の単核細胞・単球およびマクロファージの浸潤が認められ,破裂の原因として免疫反応の関与が疑われた.ステントレス生体弁は血行動態的に優れた人工弁であるが,full root法で使用した場合の合併症として,ブタValsalva洞の拡大と破裂の報告が散見される.心エコー検査やCTによる綿密な経過観察が必要である.

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