日本心臓血管外科学会雑誌
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症例報告
急性 A 型大動脈解離術後の吻合部リークによる解離性腕頭動脈瘤をステントグラフト内挿術で治療した1例
平原 浩幸菅原 正明小熊 文昭目黒 昌
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2014 年 43 巻 5 号 p. 291-295

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抄録

急性大動脈解離術後の吻合部に発生した解離性腕頭動脈瘤をステントグラフト内挿術で治療し,良好な結果が得られたため報告する.症例は62歳の男性で,腕頭動脈の解離を伴うスタンフォードA型の急性大動脈解離のため全弓部大動脈置換術を施行した.患者は術後早期から右上肢の労作時の疲労感と鈍痛を訴え,右上腕血圧は左上腕に比べ有意に低下していた.術後1カ月目に造影CT検査を施行したところ,腕頭動脈の人工血管吻合部に吻合部リークをおこし,そこが偽腔へのエントリーになっている最大短径30 mmの解離性動脈瘤を形成していた.リエントリーはなく,著しく拡大した偽腔が真腔を圧迫して上肢の虚血症状を起こしていた.術後3カ月目に撮影した造影CT検査で最大短径35 mmに増大し,上肢の虚血症状もあることから手術適応と判断してステントグラフト内挿術を行った.右腋窩動脈からステントグラフトを内挿し,解離性動脈瘤の偽腔へのエントリーを閉鎖するように留置したところ合併症をきたすことなく症状は解消し,術後7日で退院した.解離性動脈瘤の偽腔は完全に消失し,3年経過後もステントグラフトに起因する合併症は発生しなかった.ステントグラフト内挿術は吻合部に発生したエントリーを低侵襲に閉鎖でき,本例のようなリエントリーのない吻合部リークによる解離性動脈瘤にはきわめて有用な治療法である.

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